エクセルのブログ

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書評「日本人の英語」(マーク・ピーターセン著)

 先日英語の試験を受ける機会があったため、買って読んでみました。前回紹介した「経営戦略の教科書」同様、20の短いコラムに分かれています。筆者が日本人の英語(大人も学生も)を添削している時に、「ここはこうすればいいのに」と思ったことを説明してある本です。たとえば自由英作文のような、「ネイティブらしさ」を求められる問題への対策にも直結しています。

 

「不定冠詞や定冠詞はどういった規則のもとでつけるのか?」「文頭に"Additionally"とつける英文が不自然なのはなぜか?」といった疑問点を解説してあります。文法自体は理解していても、それを応用して英文を書こうとすると様々な問題が生じます。単語の使い分けや文章の書き方などがきちんと英語らしいものでないとテストでは減点されてしまいますし、高得点も狙いにくくなります。

 

具体例としてあげてありますが、「Univercity of Meiji Tennis Club」などと書けば「英語のわからない日本人がかわいい間違いをしている」などと温かく見守られることうけあいです。「Last night, I ate a chicken in the backyard.」という英文を見て「ギャグかな?」と思われるのはなぜなのでしょう?異国の言葉である英語の論理を、できるだけ正確に伝えようという筆者の努力が見てとれる親切な本であり、とてもためになりました。

 

しかし、この本一冊読んだだけで英語を完璧にできるというわけではないでしょう。「英語をマスターする本」というよりも「英語らしい英語を書く」という意識への橋渡しにとてもぴったりな一冊だと思いました。

日本人の英語 (岩波新書)

日本人の英語 (岩波新書)

 

 

書評「経営戦略の教科書」(遠藤功著)

 自分は経営戦略論について少し勉強したことがあるので、少し復習という意味合いも兼ねて読みました。200ページ程度の本ですが、18の部分に区切られているので一章あたりの分量はかなり小さいです。しかし各章ではわかりやすく、かつ端的な説明がされておりとても読みやすいです。

 

経営戦略の一つの章として起業についても書いてあったのですが、この章が個人的に面白かったです。ここで力を入れて説明されているのが「起業する際は論理的な経営ビジョンだけでなく、パッションが必要」ということです。この点については以前読んだ「武器としての交渉思考(瀧本哲史著)」にも同様のフレーズがあり、興味深かったです。(ちなみに「武器としての~」の方では投資家という立場から書かれており、「パッションのない企業には投資すべきではない」といったことが書いてありました)

著者の遠藤功さんも、「武器としての~」の著者である瀧本哲史さんも、会社こそ違いますが同じ戦略コンサルタント出身ということで共通するものがあるのかもしれません。

 

知らなかった知識としてはM&Aの部分です。日本板硝子などの例を学んでいたので意義などは知っていたのですが、買収後にも問題が発生するという観点は知らず、勉強不足でした。

 

「経営戦略」というと、無機物的で、冷淡な印象を受けるかもしれません。しかし本書で説明されているように、「パッション」や「会社らしさ」が重要視されるなど、実は人間臭いところもあるもので、その点の認識を改めることができました。

各章の分量が短いため、読み返したり過去の文章を参照する際にも便利です。とても読みやすい本でした。

経営戦略の教科書 (光文社新書)

経営戦略の教科書 (光文社新書)

 

 

書評「人口学への招待」(河野稠果著)

 ブログを更新できていなかったのはこの本を読むのに時間がかかっていたからです。とりあえず一読したのですが、まだ完全に内容を把握できたというわけではありません。おそらくころあいを見計らって二週目に突入すると思います。その時は追記という形で記すと思います。

 

購入したのは一年くらい前の話です。ゼミで東京一極集中について議論していたのですが、その中で人口の集中について議論する機会がありました。(もともと自分は増田寛也氏の「地方消滅」に触発されてテーマ選択をしたので、これはある意味当然の帰結だと思います)その時に人口集中の理解を深めるために、と思って買ったものです。結局だいぶ時間がたってしまいました。論文には残念ながら人口一極集中の抜本的な解決策は載せられなかったように思います。

 

私の主観ですが、中公新書は本格的な内容の本が多いように思います。そしてこの本もその例にもれず、かなり本格的です。そのうえ分量も一般的な新書よりも多く、かなり苦戦しました。

 

この本はその名の通り、人口学についての説明を軸にした本です。人口がどうやれば増えるのか、どのような要因によって出生率は減少するのかということについては様々な議論がなされてきました。これを人口学が産声を上げた19世紀後半から現在まで、漏れをできるだけ減らして細かく書いてあります。当然、分量も膨大なものになってきます。

 

少子化、人口転換論、結婚といった様々な観点から、人口学ではどのような分析をしているかを書いてあります。最近話題になっているエマニュエル・トッドはフランスの人口学者であり、彼の提唱した「ヨーロッパにおける合計特殊出生率のライン」についてももちろん触れてあります。読めばわかりますが、とても画期的で視覚に訴えるものであるため、わかりやすいです。

 

個人的には出生率の減少要因について、「子供を育てることに関しては、子供から得られる効用と育児にかかる費用(機会費用も含む)が釣り合ってないから発生する」といった、合理的なアプローチをとったベッカーなど、五つのアプローチが紹介されているのが興味深かったです。

 

これだけ書いてまだほんの一部しか紹介できていない、ということを考えても、本書の情報量はすさまじいと言えるでしょう。その一方で読み応えがあるという意味ではおすすめです。

 

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

 

 

書評「英語もできないノースキルの文系はこれからどうすべきか」(大石哲之著)

 タイトルがかなり刺激的なのでどれどれ、と思って呼んでみました。

 

書いている内容は一理あると思います。簡潔に言うと、学歴というシグナリングで差をつけられないわけだから、実務経験と英語力でアピールしなさい、という本です。タイトルで「えっ、もしかして裏道のような方法があるのか?」と思いそうですが、作者の結論は「英語はできなきゃいけません」です。そこを勘違いして買うと損してしまいます。

 

内容自体は理に適っていると思います。実際、わざと一年留年して海外で実務経験を積んだうえで就活するというのは納得できます。たとえばコンサルに行きたかったらコンサル関係、もしくはそれが関係しそうな海外の会社を選んで、学生のうちに経験を積ませてもらえばいいのです。あくまでも目的は経験をつむことなので、ワタミ以下の給料体系にはなってしまいますが…関係ない会社だったとしても、英語でコミュニケーションする力は身につきます。

また、最悪どこも働き口がなければ東南アジアの会社で働くというのも斬新です。今、東南アジアはバブルなので人手が足りず、望めば(もちろん英語で意思疎通ができることが条件ですが)就職することができるのです。

 

しかし文体については、人を選ぶと思います…新書を読んでいるというよりはツイッター2ちゃんねるの書き込みを読んでいる気分です。「あなたたちは失敗している(複数回出てきています)」とか「思想矯正施設にでも送り込まないといけないレベルです(148ページ)」や「負け組」などやたらと強い言葉を使います。誤解を恐れずに言えば作者の品性を疑うような表現が出てきます。このような表現が苦手な方は読むのをお勧めしません。要旨は上にまとめたのでそれを参考にしてください。ぼくは苦手です。

 

また、英語を重要視して「TOEICは満点くらいないとシグナリング効果を生まない」と言っていますが作者の英語能力は不明のままです。アクセンチュアという外資系の企業にいたわけですし、相当に英語が達者だと考えられますが…

韓国の学生はフィリピンのセブ島で英語合宿した、という情報を教えてくれるのなら、筆者も実際にやってみてどうだったかを書いてくれてもいいんじゃないかなぁ、と思いました。それとも筆者は英語がなくても問題ない「勝ち組」の人間だということでしょうか。

 

 

書評「タックス・ヘイブンー逃げていく税金」(志賀櫻著)

もともと積んでいたのですが、フォロワーの方から「面白いよ」と勧められたこともあって読みました。ゼミで専攻しているテーマと関わってくる話題だったので早いうちに読んでおきたかったですが…

 

タイトル通りタックス・ヘイブンについて書かれた本です。タックス・ヘイブンが何かということを知らない人はあまりいないかと思われます。つい最近ではパナマ文書が問題になりましたね。イメージとしては脱税に近いです。(というか筆者はタックス・ヘイブンを利用した租税回避と脱税は同じグループに入るとしています。しかしその線引きが非常に難しいとのことです。)

 

例えば、日本とケイマン諸島では税率が大きく異なります。ケイマン諸島の方がとても低いのです。したがって、日本で100万円手に入れるのとケイマン諸島で100万円手に入れるのでは手元に残る金額が異なってきます。そこで手に入れた100万円をばれないように日本からケイマン諸島に移せば儲かるじゃん!というのがタックス・ヘイブンです。

 

しかしこのような脱税で動くお金というのは億や兆の単位であって、自分たちの生活とは関係ないように思われます。なので人々も関心を示しません。

しかしながら、筆者はこのタックス・ヘイブンが私たちの日常にも大きな影響を与えるものとして主張しています。それも私たちの負担が増えるとも主張しているのです。

「所得や利益を海外にあるタックス・ヘイブンに逃がして、本来なら国に納めるべき税金を払わないで済ませている高額所得者や大企業は多数存在する。そのツケを負わされているのが、中所得・低所得の市民である。…(中略)…ところが、タックス・ヘイブンを使った脱税行為、租税回避行為はその義務を無視、あるいは放棄し、本来ならば国庫に納められるべき税金を海外のどこかに逃がしてしまう。」

 

タックス・ヘイブンが持つ悪影響のうち一つを上げましたが、本書では他二種類の悪影響についても述べられています。テロとの関係性、経済ショックとの関係性の二つです。

 

かなり複雑な内容ではあるのですが、国際税制度の最先端で実際に活動していらっしゃったこと、複雑な仕組みについても丁寧に解説されていることで読み飽きることがありませんでした。

おススメされた通りの良書だと思います。

タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)

タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)

 

 

書評「戦略がすべて」(瀧本哲史著)

 おおざっぱにまとめると、「いろいろ残念な本」という感想です。

 

本書の構成は24のケーススタディから成っています。これを通して現代に必要な「戦略的思考」を鍛えていくというものです。この「戦略的思考」とは労働者コモディティ化する現在においてどのように勝ち抜いていくかを考えるのに必要なもので、作者の主張は「僕は君たちに武器を配りたい」などと一貫しています。

 

しかし残念というのは、タイトルや帯など、ミスリードを誘うような仕掛けが多いのです。たとえばあらすじが書いてあるのですが、「ムダな努力を重ねる前に、「戦略」を手に入れて世界を支配する側に立て。」「我々が取るべき選択を示唆した現代社会の「勝者の書」。」とどうもずれてしまっています。この本は思考訓練のための本であって、「こうするべきだ」というメッセージを持った本ではないと思いますが…書いてある内容は素晴らしいので、これは作者というよりも編集側の問題でしょう。

 

終章で「本書「戦略がすべて」はその手助けをする本である。(「その」とは、一つ前の段落にある「身の回りに起きている出来事や日々目にするニュースに対して、戦略的に「勝つ」方法を考える習慣を身に着ける」ことだと思われます)」と語っていますが、実践的戦略思考の手助けを目的とする本であれば問いかけ形式で発表してほしかったです。また、この前提を本の最初で紹介していないので、筆者が想定した読み方を読者が実現できない可能性が高いです。

 

巻末には「日経プレミアPLUS」と「新潮45」で連載されたコラムをまとめたもの、と注釈がうってあります。なので、ある一つのメッセージを伝える本、というよりは24のコラムをつぎはぎしたパッチワークというのが近いです。

「瀧本哲史という人が今話題だから、その人になんか適当に本を書かせたら本がバカ売れするだろう」という編集部の考えが見えてしまうようです。「若年層に資本主義社会を生き残る武器を渡す」というメッセージのもとに書かれた星海社新書から出版されている著作と比べると格段に見劣りします。

新潮のこの本ではなく、星海社、およびその親会社である講談社から出版されている作者の本を読むべきだと思います。

 

戦略がすべて (新潮新書)

戦略がすべて (新潮新書)

 

 

書評「夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘」(中川淳一郎著)

 なかなか強烈なタイトルです(笑)

タイトルを少し柔らかく言うと、「世の中にはキレイゴトの夢を語る若者が多すぎであり、彼らは宗教のようにそれを信じ込んでしまっている。社会の人も企業の人もそんなことは考えてないし求めてもいないのに…」こんな感じでしょうか。大きすぎる夢を追いかけた結果、それは達成できず置いた自分だけが残るという状況を危惧して書かれたものです。

 

「夢よりももう一つ下の目標こそ大切にすべきだ」というのが主張であり、実は仕事もそこまで悪いもんじゃないよ、ということが筆者の経験に沿って書かれています。

結局仕事というのもそこまで悪いものでもないし、楽しめばそれなりに面白い、ということでしょうか。

 

私は中川さんの本をよく読みますが、それは含蓄があるとかではなく、筆者のエピソードが面白いからです。この本でも筆者の奇想天外なエピソードがいくつか紹介されており、やはり面白かったです。そういう意味では買ってよかった、といえると思います。

ただ内容をちゃんと真に受けるべきかというと、この人は一橋→博報堂という超エリートコースを進んでおり、それゆえの人脈あったからこその成功人生だと思います。なので他の人におすすめできるか、といわれると自分はできないです…