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書評「生活保障 排除しない社会へ(宮本太郎)」・「ベーシック・インカム入門(山森亮)」・「ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか(原田泰)」・「グローバル・ベーシックインカム入門 世界を変える「ひとりだち」と「ささえあい」の仕組み(岡野内正他)」

 タイトルでネタバレ感がありますが、ベーシック・インカムについてです。

ベーシック・インカムとは、端的に言えばお金のばらまきです。国民全員にお金をバラマクことで貧富の差を無くそうというのが根本の概念です。どの本でも書かれていますが、「財源は大丈夫なのか?」「お金をバラまくと人は働かなくなるのではないか?」というのが争点になってきます。宮本太郎さんの「生活保障」ではこれらの理由から、日本へのベーシック・インカムに反対しています。その一方で、ベーシック・インカムについて述べた二つの新書では、日本へのベーシック・インカムは導入すべきだと訴えています。財源的には問題ない、人々の生活はむしろ安定するので労働意欲が減ることは考えにくい、というのが主な論調です。

しかし重大な欠点があります。ベーシック・インカムは新しい概念であるがゆえに導入事例がないのです。先進国では導入事例がほとんどなく、オランダが導入したが中途半端に終わったというだけです。したがって、日本への導入後のメリットやデメリットは具体性を欠き、抽象的なわかりにくい議論になってしまいます。自分の場合そのあたりの理解が中々うまくいかず、追加で読んだのが「グローバル・ベーシック・インカム」になります。実は海外でのベーシック・インカム導入事例はいくつかあり、それについて詳しく踏み込んだ革新的な本となります。

結論としてはやはり、日本のような先進国で導入するには物価が高すぎて難しいな、というのが感想でした。確かに今の財源をベーシック・インカムへ転換すれば財政的には導入可能ですが、政治的な手続きの煩雑さを完全に無視しているのです。もちろん反対する人もいますし、下手に自分の票数を減らすような政策案を政治家は可決したくないだろうと思います。

一方でナミビアや、ブラジルの貧困地帯など、日本よりはるかに貧しい国では、明日の食べ物にすら困るような国民が多数を占めています。そのような国では、一か月に一万円程度~二万円程度の給付ですら生活の大きな助けになるのです。少ない予算で多くの人々の生活を援助できるわけで、費用対効果がとても高いのです。したがって、このような国家でまずは試験的に実施し、段階的に導入すべきなのでしょう。

とにかく、この「グローバル・ベーシックインカム入門」については具体事例が豊富で、かなり理解の助けになりました。ぜひ読んでおくべきだと思います。

生活保障 排除しない社会へ (岩波新書)

生活保障 排除しない社会へ (岩波新書)

 

 

 

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)

 

 

 

グローバル・ベーシック・インカム入門――世界を変える「ひとりだち」と「ささえあい」の仕組み

グローバル・ベーシック・インカム入門――世界を変える「ひとりだち」と「ささえあい」の仕組み

  • 作者: クラウディア・ハーマン,ディルク・ハーマン,ヘルベルト・ヤウフ,ヒルマ・シンドンドラ=モテ,ニコリ・ナットラス,イングリッド・ヴァン・ニーケルク,マイケル・サムソン,岡野内正
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2016/01/08
  • メディア: 単行本
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