エクセルのブログ

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書評「英語もできないノースキルの文系はこれからどうすべきか」(大石哲之著)

 タイトルがかなり刺激的なのでどれどれ、と思って呼んでみました。

 

書いている内容は一理あると思います。簡潔に言うと、学歴というシグナリングで差をつけられないわけだから、実務経験と英語力でアピールしなさい、という本です。タイトルで「えっ、もしかして裏道のような方法があるのか?」と思いそうですが、作者の結論は「英語はできなきゃいけません」です。そこを勘違いして買うと損してしまいます。

 

内容自体は理に適っていると思います。実際、わざと一年留年して海外で実務経験を積んだうえで就活するというのは納得できます。たとえばコンサルに行きたかったらコンサル関係、もしくはそれが関係しそうな海外の会社を選んで、学生のうちに経験を積ませてもらえばいいのです。あくまでも目的は経験をつむことなので、ワタミ以下の給料体系にはなってしまいますが…関係ない会社だったとしても、英語でコミュニケーションする力は身につきます。

また、最悪どこも働き口がなければ東南アジアの会社で働くというのも斬新です。今、東南アジアはバブルなので人手が足りず、望めば(もちろん英語で意思疎通ができることが条件ですが)就職することができるのです。

 

しかし文体については、人を選ぶと思います…新書を読んでいるというよりはツイッター2ちゃんねるの書き込みを読んでいる気分です。「あなたたちは失敗している(複数回出てきています)」とか「思想矯正施設にでも送り込まないといけないレベルです(148ページ)」や「負け組」などやたらと強い言葉を使います。誤解を恐れずに言えば作者の品性を疑うような表現が出てきます。このような表現が苦手な方は読むのをお勧めしません。要旨は上にまとめたのでそれを参考にしてください。ぼくは苦手です。

 

また、英語を重要視して「TOEICは満点くらいないとシグナリング効果を生まない」と言っていますが作者の英語能力は不明のままです。アクセンチュアという外資系の企業にいたわけですし、相当に英語が達者だと考えられますが…

韓国の学生はフィリピンのセブ島で英語合宿した、という情報を教えてくれるのなら、筆者も実際にやってみてどうだったかを書いてくれてもいいんじゃないかなぁ、と思いました。それとも筆者は英語がなくても問題ない「勝ち組」の人間だということでしょうか。

 

 

書評「タックス・ヘイブンー逃げていく税金」(志賀櫻著)

もともと積んでいたのですが、フォロワーの方から「面白いよ」と勧められたこともあって読みました。ゼミで専攻しているテーマと関わってくる話題だったので早いうちに読んでおきたかったですが…

 

タイトル通りタックス・ヘイブンについて書かれた本です。タックス・ヘイブンが何かということを知らない人はあまりいないかと思われます。つい最近ではパナマ文書が問題になりましたね。イメージとしては脱税に近いです。(というか筆者はタックス・ヘイブンを利用した租税回避と脱税は同じグループに入るとしています。しかしその線引きが非常に難しいとのことです。)

 

例えば、日本とケイマン諸島では税率が大きく異なります。ケイマン諸島の方がとても低いのです。したがって、日本で100万円手に入れるのとケイマン諸島で100万円手に入れるのでは手元に残る金額が異なってきます。そこで手に入れた100万円をばれないように日本からケイマン諸島に移せば儲かるじゃん!というのがタックス・ヘイブンです。

 

しかしこのような脱税で動くお金というのは億や兆の単位であって、自分たちの生活とは関係ないように思われます。なので人々も関心を示しません。

しかしながら、筆者はこのタックス・ヘイブンが私たちの日常にも大きな影響を与えるものとして主張しています。それも私たちの負担が増えるとも主張しているのです。

「所得や利益を海外にあるタックス・ヘイブンに逃がして、本来なら国に納めるべき税金を払わないで済ませている高額所得者や大企業は多数存在する。そのツケを負わされているのが、中所得・低所得の市民である。…(中略)…ところが、タックス・ヘイブンを使った脱税行為、租税回避行為はその義務を無視、あるいは放棄し、本来ならば国庫に納められるべき税金を海外のどこかに逃がしてしまう。」

 

タックス・ヘイブンが持つ悪影響のうち一つを上げましたが、本書では他二種類の悪影響についても述べられています。テロとの関係性、経済ショックとの関係性の二つです。

 

かなり複雑な内容ではあるのですが、国際税制度の最先端で実際に活動していらっしゃったこと、複雑な仕組みについても丁寧に解説されていることで読み飽きることがありませんでした。

おススメされた通りの良書だと思います。

タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)

タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)

 

 

書評「戦略がすべて」(瀧本哲史著)

 おおざっぱにまとめると、「いろいろ残念な本」という感想です。

 

本書の構成は24のケーススタディから成っています。これを通して現代に必要な「戦略的思考」を鍛えていくというものです。この「戦略的思考」とは労働者コモディティ化する現在においてどのように勝ち抜いていくかを考えるのに必要なもので、作者の主張は「僕は君たちに武器を配りたい」などと一貫しています。

 

しかし残念というのは、タイトルや帯など、ミスリードを誘うような仕掛けが多いのです。たとえばあらすじが書いてあるのですが、「ムダな努力を重ねる前に、「戦略」を手に入れて世界を支配する側に立て。」「我々が取るべき選択を示唆した現代社会の「勝者の書」。」とどうもずれてしまっています。この本は思考訓練のための本であって、「こうするべきだ」というメッセージを持った本ではないと思いますが…書いてある内容は素晴らしいので、これは作者というよりも編集側の問題でしょう。

 

終章で「本書「戦略がすべて」はその手助けをする本である。(「その」とは、一つ前の段落にある「身の回りに起きている出来事や日々目にするニュースに対して、戦略的に「勝つ」方法を考える習慣を身に着ける」ことだと思われます)」と語っていますが、実践的戦略思考の手助けを目的とする本であれば問いかけ形式で発表してほしかったです。また、この前提を本の最初で紹介していないので、筆者が想定した読み方を読者が実現できない可能性が高いです。

 

巻末には「日経プレミアPLUS」と「新潮45」で連載されたコラムをまとめたもの、と注釈がうってあります。なので、ある一つのメッセージを伝える本、というよりは24のコラムをつぎはぎしたパッチワークというのが近いです。

「瀧本哲史という人が今話題だから、その人になんか適当に本を書かせたら本がバカ売れするだろう」という編集部の考えが見えてしまうようです。「若年層に資本主義社会を生き残る武器を渡す」というメッセージのもとに書かれた星海社新書から出版されている著作と比べると格段に見劣りします。

新潮のこの本ではなく、星海社、およびその親会社である講談社から出版されている作者の本を読むべきだと思います。

 

戦略がすべて (新潮新書)

戦略がすべて (新潮新書)

 

 

書評「夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘」(中川淳一郎著)

 なかなか強烈なタイトルです(笑)

タイトルを少し柔らかく言うと、「世の中にはキレイゴトの夢を語る若者が多すぎであり、彼らは宗教のようにそれを信じ込んでしまっている。社会の人も企業の人もそんなことは考えてないし求めてもいないのに…」こんな感じでしょうか。大きすぎる夢を追いかけた結果、それは達成できず置いた自分だけが残るという状況を危惧して書かれたものです。

 

「夢よりももう一つ下の目標こそ大切にすべきだ」というのが主張であり、実は仕事もそこまで悪いもんじゃないよ、ということが筆者の経験に沿って書かれています。

結局仕事というのもそこまで悪いものでもないし、楽しめばそれなりに面白い、ということでしょうか。

 

私は中川さんの本をよく読みますが、それは含蓄があるとかではなく、筆者のエピソードが面白いからです。この本でも筆者の奇想天外なエピソードがいくつか紹介されており、やはり面白かったです。そういう意味では買ってよかった、といえると思います。

ただ内容をちゃんと真に受けるべきかというと、この人は一橋→博報堂という超エリートコースを進んでおり、それゆえの人脈あったからこその成功人生だと思います。なので他の人におすすめできるか、といわれると自分はできないです…

 

書評「戦略論の名著 孫子、マキャヴェリから現代まで」(野中郁次郎編著)

 タイトルの通り、戦略論について書かれた本の内「名著」と呼ばれる本について12冊をとりあげ、12人の筆者がそれぞれ記したものです。とりあげられている本は以下の通りです。

①「孫子孫武

②「君主論マキャヴェリ

③「戦争論」クラウゼヴィッツ

④「海上権力史論」マハン

⑤「遊撃戦論」毛沢東

⑥「戦争史大観」石原莞爾

⑦「戦略論」リデルハート

⑧「戦略」ルトワック

⑨「戦争の変遷」クレフェルト

➉「現代の戦略」グレイ

⑪「軍事革命とRMAの戦略史」ノックス&マーレー

⑫「アストロポリティーク」ドールマン

それぞれの本の要約がまとめてあるだけです。正直なんで買ったのかな、と後悔しました。ただの本の説明にとどまっており、作者の独自の考えなどはほとんどありません。ただリストにして発表するのとなんら変わらないのです。ただ紹介されている本の一部は日本語訳がなかったり、読める環境にないのでメリットはそれくらいでしょうか。買ってまで読む価値はないと思われます。

 

最近は著名人による本の紹介のみの本があるのですが、あれはどういう目的なのでしょう(成毛眞さんの「面白い本」など)。おすすめの本があるのであれば出版社と共同でリストを作り、無料で公開すればそれでいいのではないか、と思いました。以前中公新書佐藤優さんが提携して「おすすめの中公新書厳選書籍101」といったものを発表していましたが、あれで代替できると考えるのは私だけでしょうか。

 

書評「僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版」(瀧本哲史著)

 京大でも一般教養の講義を担当していらっしゃる瀧本教授(だったかな)の本です。タイトルはかなり有名ですね。自分も名前だけは知っていましたが、当時は読書の習慣がなくて買いませんでした。

 

一回生のころに瀧本先生の講義をとっておぼろげながら内容が頭に残っている学生としては「あぁ

、こんなこと言ってたな」という感想でした。結構講義内容と被りがあるように思えます。だからといって講義を受けた人が読まなくていい、というのとはまた違うとも思いますが…

 

テーマは一貫しています。「資本主義が本格化するこの日本の中で、取り換え可能な人間=コモディティ化を避けるにはどうするか」ということです。

 

そこで著者は労働者を六つの区分に分け、そのうち四つの区分の人々しかコモディティ化を避けられないとしています。著者がエンジェル投資家として働いているからか、「投資家」としての生き方が一番ひいきされているようにも感じましたが…

 

そして最後の章ではこの世界の生き方の紹介をしています。今まで章で書かれた考えに従っても、それが常識はずれになってしまうこともあるでしょう、しかし、「自分自身の人生を生きるのは自分だけである。だから、それで失敗するのは誰かの言いなりになって失敗するよりも100倍マシだと考える」と主張しています。実際、誰かの言う通りで失敗した場合は責任も他人に押し付けがちになってしまいます。

 

自分が講義を聞いていた時、起業論がテーマということもあってやたらと学生に起業をすすめていたという印象がありました。そのせいか、「言っていることは腑に落ちるけれどもどこかうさんくさいオジサン」というイメージがついてしまいました。言っていることは確かに正しいのだけれども、起業以外の方法もあるのではないか、というのが自分の考えでした。個人的には、起業論以外でもキャリア形成の講義を聞いていたいと思いました。

僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版 (講談社文庫)

僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版 (講談社文庫)

 

 

書評「スタンフォードの自分を変える教室」(ケリー・マクゴニガル著)

 意志力に関する本です。邦訳だとタイトルが「自分を変える」という少し抽象的な表現になっていますが、原著のタイトルの方がわかりやすいです。(原著のタイトルは「The willpower instinct」というもので、意志力の強さ?といった訳になります)

具体的に言うと「やらなくちゃと思う事をやらなかったり、ついつい課題を中断してやりたいことに走ってしまう、しかしそれはなぜだろう?」ということをテーマとして扱っています。そしてその方法を読者が読み、実際の生活で応用することによってやらなければならないことをきちんと達成できるようになることがゴールです。

 

そのためにさまざまな観点からの意志力の分析結果、そして自分の意志力の欠落は何が原因なのかということを知るためのワークが記載されています。九つの観点から述べてあり、各観点は毎週行われる講義の中で発表される、という設定です。

 

自分も意志力の弱さに危機感を持って購入したのですが、きちんと自分のタイプも網羅してありました。自分の場合はストレスをかけすぎるタイプで、これが当てはまる人は結構多いのではないでしょうか。

 

本を読破することはしましたが、この本の真の読破は書かれている分析を行い、自分の意志力の弱さの原因は何なのか、どのような方法で解決できるのかを探り当てることです。なのでしばらくこの本は手放せそうにありません。

自分の行動を節制するための良書であり、良い本でした。

スタンフォードの自分を変える教室 (だいわ文庫)

スタンフォードの自分を変える教室 (だいわ文庫)