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書評「ビジネス難問の解き方 壁を突破する思考」(唐津一著)

 いわゆる「問題解決」論の新書です。書かれた時代は2001年と昔ですが、現代の状況と照らし合わせてみると作者の懸念が現代にも当てはまっており、しばしば驚いてしまいました。問題解決について議論した後は、問題解決における情報の重要性、アイデアの設計方法、決断方法を論じています。この本が書かれた2001年はIT革命の全盛期ということもあり(本書の中の統計ではまだ最もメジャーな情報収集手段がテレビでした)、最後の章では当時のビジネスを筆者が俯瞰しています。

 

この本の中では具体例が豊富に取り上げられており、抽象的な論というよりはビジネススクールケーススタディに近い構成になっています。具体例の種類も豊富で、実際に企業が行った施策にとどまらず、国家レベルでの意思決定も含まれています。すなわち、ここで作者が提示している「問題解決」とはビジネスレベルだけではなく国家レベルでの問題も含めているということができます。

 

問題解決について様々な観点から論じていますが、実は筆者の焦点は一つにまとめることができます。それは「現場現物主義」の重要性です。例えば以下のような具体例があげてあります。

「先日、あるテレビ局のニュースを見ていたら、日本の貿易黒字が増えたというアナウンスと同時に、画面に自動車の映像が流れた。(中略)本来、事実を伝えるべきマスコミが、「日本の輸出といえば自動車」という固定観念にここまで凝り固まっていたとは」

よく日本の輸出品目といえば自動車が話題になりますが、輸出の大部分を担っているのは実は違う、部品や工作機械といった資本財なのだという主張をしています。個人的に「この本が書かれたのは2001年であり、現在は変わっているのでは?」と考えたので調べてみました。すると、現在もこの傾向は維持されているということがわかりました。

三菱JFJリサーチ&コンサルティングのレポート(http://www.murc.jp/thinktank/economy/analysis/research/report_130926.pdf

によりますと、各国の輸出品目のRCAが算出されています。RCAとは、ある国の輸出総額における某財の輸出額の割合と、世界の輸出額における某財の輸出総額の割合を比べたもので、大きければ大きいほど競争力が高いということになります。(問題が生じた場合は連絡してもらえれば消去します。)すると、日本においては消費財(車なども含みます)のRCAはマイナスに落ち込んでいるのに対して部品や資本財のRCAは50程度の数値を保っています。特に部品に関しては近年上昇傾向にあります。つまり、日本の輸出産業を担っているのは消費財を販売する大手メーカーではなく、部品や制作機械を輸出する優れた技術力を持ったメーカーということが言えます。

 

このように、実際に厳密なデータを検索して調べてみると風説を異なっていたという現象はよく発生します。風説で納得してしまうのではなく、実際にデータを調べたり、現場を訪れたりしてリアルのデータを調べることの重要性を説いた本だと言えます。これは現実のビジネス問題にも通用しますし、参考になると思います。

 

ビジネス難問の解き方 (PHP新書)

ビジネス難問の解き方 (PHP新書)