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書評「人生は20代で決まる」メグ・ジェイ

TEDで2013年度の最優秀プレゼンテーションに選ばれた筆者の本です。

筆者はヴァージニア大学で准教授を務めながら、メンタルクリニックで主に若者のセラピーを行っています。そこから得た教訓がタイトルにつながってくる、というわけです。内容に関してはまさにタイトル通りで直球の内容でした。仕事・恋愛・能力の三点から20代の人生の重要性を説いていきます。就職活動をしているということもあり、とても共感できる部分が多い本でした。

例えば仕事の場合、「アイデンティティ・キャピタル」という概念を持ち出します。個人を特徴づけるのは主に性格が多いですが、それではその人の能力を示してくれません。その人は何ができるのかは資格や経歴から判断するしかありません。この資格や経歴をアイデンティティ・キャピタルと呼んでいるのです。その一方で、「~するべき」という固定観念に凝り固まってしまった患者の例も紹介してあります。つまり、何をするべきか、これは自分の意思で決めることであるが決めた以上はそれに向かって最大限の努力をするべき、それも目に見える形で結果が残らなければならないということになります。ただの自己啓発書とは違い、現実的な部分は現実的に、決して享楽主義に走りすぎないちょうどいいスタンスを貫いています。

また能力という面においては、脳の発展事例を紹介します。私たちの脳は大学生になるまでに完成しますが、それは感情の部分だけ。未来について細かい計画を立てる部分はこの20代に最も成長するのです。その大事な時期を「今が楽しければいい」とトレーニングに使わないのはあまりにももったいなさすぎます。結婚や就職という一大イベントを抽象的なものにして遠くに置くのではなく、イメージを徹底的に具体化していくことが求められます。具体化すれば現実的な予定を作ることができますし、それにかかる時間がわかります。そして現在からその目標を達成するまでに、時間がないことがわかるのです。

自己啓発書というカテゴリーに分類されるのでしょうが、現実的な自己啓発書であり、夢想主義におらず適度に現実と向き合っています。さらに、本書はセラピーのエピソードが主な構成になっています。何も感じずに読み進めれば「こんな人もいるのね」程度に終わってしまいかねません。「何かをつかみ取る」という積極的な姿勢で読むことが読者に求められているという点でも、良書であると思います。以前紹介した「武器としての決断思考」に書いてある「読書は格闘技」という言葉を実感させられる本でした。

人生は20代で決まる――仕事・恋愛・将来設計 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

人生は20代で決まる――仕事・恋愛・将来設計 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)