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書評「シルバー民主主義 高齢者優遇をどう克服するか」八代尚宏

 普段はあまり読まないテーマの本ですが、ゼミの関係で…しかし高齢化問題についての知識も認識も甘かったことを痛感し、読み進めるのが苦労でした。一応一週間ほどで読破しているので、理想としてはこれくらいのペースで新書を読破していきたいのですが…

タイトルにある「シルバー民主主義」とはなじみのない言葉だと思います。

少子高齢化が進む日本では、人口における高齢者の割合が増加していきます。すると政治的な力も増えてしまい、高齢者の目線によりすぎた制度改革がなされる、というものです。年金引き下げについて高齢者が徒党を組んで抗議活動をしたことは記憶に新しいと思います。本書の中にも紹介されていますが、もちろん高齢者が団結して権利を守ろうとするのはアメリカでも欧州でも起きていることで、ある意味当たり前のことです。しかしその活動に問題があります。アメリカや欧州では「世代間対立を避ける」ことを守っているのに対し、日本はそうではない。現在の年金システムが借金の上に成り立つ不安定なものという認識が欠如しているために、「負担は軽く、サービスは重く」という主張に走ってしまうのです。これこそまさに「シルバー民主主義」の典型例だと言えます。

 

上では年金制度についてあげましたが、このようなシルバー民主主義が引き起こしている問題はこれだけにとどまらず、雇用や政治、保険や介護にも存在している、というのが筆者の主張です。筆者に言わせれば、少ない高齢者を多くの働き盛りが支えることを前提としているシステムを、少子高齢化になっても引きずるという怠慢が引き起こしたもので、即刻システムのアップデートにより解決すべきというものです。高齢者の中での所得移転や、労働年数の引き上げ、シルバー市場の整備など筆者の解決策も示されています。

 

どこかで解決すべき問題であると同時に、私たちの多くが見て見ぬふりをしている問題を改めて認識させる、という点で意義のある本だと思いましたし、単純に少ないページながら読み応えのある新書でした。