書評「マインド・コントロール」岡田尊司
少し時間がかかってしまいました。テスト期間に突入していたこともあり、読書する機会が減ってしまい、少し読書スピードが遅くなってしまいました。
タイトルに書いてある通り、マインド・コントロールについて書かれた本です。初めに現代におけるマインド・コントロールの具体例について述べてあり、導入の役割を果たします。その後、なぜマインド・コントロールにかかりやすい人がいるか述べています。作者によると以下の特徴がみられるとしています。
①依存的なパーソナリティ…「相手に嫌われたり、ノーということを恐れる」タイプ
②被暗示性が高い…「入って来る情報に対して、信じるべきかそうでないかの判断をする能力が低下した状態」
③バランスの悪い自己愛…自分の能力を過小評価しすぎることです
④現在および過去のストレス…「その人が受けているストレスの大きさ」
⑤支持環境の脆弱さ…「自分が自信を持てる安全基地を持てない人」
そして後半では歴史を通して、マインド・コントロールがどのような方法で行われてきたかの紹介になります。たとえばパブロフの実験が有名です。有名なパブロフの実験の後には続きがあった、という話です。実はパブロフの実験に使った犬が水没しそうになり、中にいた犬も水攻めにあってしまいました。するとベルを鳴らしてもよだれをださなくなったそうです。加えて大人しかった犬が人をかむようになったり、その逆が起こりました。これを「超逆説的段階」と呼びました。意図的に犬を九死に一生を得るような状況におくことでこの「超逆説的段階」は発生するそうです。そしてこれは人間にも応用可能ということはアメリカやロシアの軍で確認済です。このほか、様々なテクニックとその原理が紹介されています。
このような非日常的な場合でなくとも、私たちの周りにはカルトや反社会的集団など、人々をマインド・コントロールの統制下におこうとする集団が存在します。私たちはどうすべきか。筆者は次のように語っています。
「マインド・コントロールは結局自立と依存の問題に行きつく。」
「現実の社会の中で、つながりと自分の価値に対する欲求がうまく満たされないとき、その欲求を手っ取り早く満たしてくれるものにおぼれる可能性が高まる。」
本文中でも触れられていますが、「自分一人でもできるんだ」という基盤づくりによる「自立」、そして家族との安定した絆、彼らを否定せず受け止めてくれるような絆による「つながり」が必要なのです。多くの人に自分を信頼させ、依存させる組織に対する防衛手段としての「自立」と「つながり」が、今の世界では求められていると考えられます。