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書評「谷崎潤一郎犯罪小説集」(谷崎潤一郎著)

 特徴的な表紙とタイトルの本です。四編の短編小説から成る本です。

日本における推理小説の元祖といえば、誰もが江戸川乱歩の名をあげると思います。そして、江戸川乱歩エドガー・アラン・ポーに影響されてそのペンネームを付けたというのも有名です。しかし、実は江戸川乱歩以前に推理小説に挑戦した作家がいるのです。それが谷崎潤一郎であり、江戸川乱歩がミステリの枠を形作る前の時代に、ミステリに挑戦しているのです。その谷崎潤一郎著作江戸川乱歩に影響を与えることになりました。

 

このような視点から読めば、面白さが増すのではないかと思います。「柳湯の事件」「途上」「私」「白昼鬼語」の四編が収録されていますが、前三篇はお世辞にもできがよいとは言えません。しかしながら、ミステリをなんとか自分の形で表現しようという作者の努力が伝わると思います。そうした挑戦を積み重ねて完成したミステリが、最後の「白昼鬼語」へとつながっていくのです。

分量が前三篇と比べて長いだけでなく、話自体も骨太なものとなっています。特に主人公とその親友・園村が殺人現場を目撃する場面はぺージをめくる手をせかすような作者の表現の妙があり、話に引き込まれていきます。そして最終的に「園村は狂人である」という伏線を最後に回収するラストも素晴らしかったです。

 

現在主流になっている、謎を解くタイプの本格ミステリとは時代が異なり、知恵比べのような要素はありません。しかし作者が導くジェットコースターのような緩急の激しいシナリオは読むに値するものであると思います。

谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2)

谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2)